グラム染色
グラム染色は組織内の菌類、細菌類の検出とグラム陽性菌、陰性菌を染め分けることを目的とした染色である。染色の原理は諸説あるが、グラム陽性菌と陰性菌の細胞壁の構成成分の著名な差を利用して染め分けされる。病理組織分野ではグラム陽性菌と陰性菌の染め分けに加えて、背景組織とグラム陰性菌を染め分ける技術が必要となる。以上の理由から細菌検査分野とは異なる染色技術が要求される。
今回は平成24年度に宮城県で行われた精度管理を元に検討されたハッカーコン法、バーミー法、フェイバーG法の宮臨技推奨方法とブラウンホップス法の紹介をする。
ハッカーコン法(宮臨技推奨法)
細菌検査分野では廃れてきているが、病理分野では未だ広く行われている。染色工程が比較的少なく簡便である事、背景組織とグラム陰性菌の染め分けが可能である事が病理組織分野の染色と相性が良いと考えられる。サフラニンはヘリコバクターピロリやカンピロバクターが染色されないので注意が必要である。
工程 |
時間 |
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脱パラ |
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クリスタル紫 |
1〜5分程度 |
充分に染まればよい |
水洗 |
切片は濃青色 |
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ルゴール液 |
1分 |
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水洗 |
切片は黒青色 |
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アセトンで分別 |
1槽8回上下 |
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水洗 |
切片は淡黄色 |
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0.25%サフラニン |
5秒前後で調整 |
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水洗 |
やや色が落ちるので手早く |
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アセトンで分別、脱水 |
2槽10回上下 |
少し分別される |
キシレン |
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封入 |
0.25%サフラニンは染色時間を数秒と短くし、アセトンで分別、脱水する事で陽性菌の脱色を防ぎ、背景組織とグラム陰性菌を染め分けることが出来る。
ハッカーコン法 染色像
バーミー法(宮臨技推奨法)
細菌検査分野で広く使われている染色方法である。グラム陽性菌を染めるクリスタル紫に炭酸水素ナトリウムを加えて染色性を向上させ、グラム陰性菌は塩基性フクシンで染色するBaltholomew&Mitter法を基にした方法。武藤化学やメルクジャパン、和光純薬より染色キットが販売されている。
工程 |
時間 |
脱パラ |
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クリスタル紫 |
30秒 |
水洗 |
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ヨウ素・水酸化ナトリウム液 |
1分 |
水洗 |
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フクシン液(パイフェル液) |
数秒 |
水洗 |
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エタノール |
短時間で |
キシレン |
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封入 |
陰性菌や背景組織がやや強めに染色される。最後の脱水過程は乾燥でなくエタノールで行うことで背景組織とグラム陰性菌を染め分ける事が出来る。長時間のエタノール脱水は陽性菌の脱色が起こるので注意すべきである。
バーミー法 染色像
フェイバーG法(宮臨技推奨法)
特徴として媒染と脱色を同時に行うため手技が簡便である。市販の染色液を使うことが出来、セット販売や個別に1本ずつの購入も可能である。脱色液による脱色のし過ぎがないため確実に染色できる。各試薬は長期保存に対しても安定である。染色液Bはサフラニンとフクシンがあるが今回はフクシンによる方法を紹介する。
工程 |
時間 |
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脱パラ |
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染色液A(ビクトリアブルー) |
1分 |
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水洗 |
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脱色液 |
2回 |
それ以上は染色性が落ちる |
水洗 |
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染色液Bフクシン液 |
10秒 |
ムラにならなければ短いほど良い |
水洗 |
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アセトン |
2槽 |
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キシレン |
3槽 |
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封入 |
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細菌検査用の原法で行うとフクシンの染色時間が長いため、背景組織との区別がつかなくなることや乾燥によって背景組織が潰れてしまうことが起こるので注意すべきである。
フェイバーG法 染色像
ブラウンホップス法
グラム陽性菌を青く、陰性菌を赤く、背景組織を黄色く染め分ける病理組織分野特有のグラム染色。背景組織とグラム陰性菌が異なる色で染め分けられるため、菌体の確認が容易である。欠点として染色工程が煩雑になる。
工程 |
時間 |
脱パラ |
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クリスタル紫 |
5分 |
水洗 |
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ヨウ素液 |
5分 |
水洗 |
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フクシン液(パイフェル液) |
5〜10分 |
水洗 |
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Gallego液 |
5分 |
水洗 |
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ピクリン酸アセトン液 |
数回 |
アセトン |
数回 |
アセトン・キシレン |
数回 |
キシレン |
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封入 |
Gallego液:ホルマリン原液1ml 蒸留水50ml 氷酢酸0.5ml
ピクリン酸アセトン:ピクリン酸0.5g アセトン1000ml
アセトン・キシレン:アセトン50ml キシレン50ml
ブラウンホップス法 染色像